ミステリー同好会の部室に松田響輝と山口俊也は戻って来た。もう由美子と川崎麗奈も戻っていた。川崎麗奈はホテルで聞いた話をみんなに話した。
「ホテルに言ったら、支配人さんに話を聞くことができたのですが、支配人には密かに警察が捜査の状況を話していたらしいです。それであの俳優が昨日、任意で警察に出頭するように要請して、出頭したらしいですよ。でも美鈴さんの殺人は自分じゃないと、ずっと主張しているみたいです。」
ここまで話して川崎麗奈は由美子の方を向いた。すると今度は由美子が話し始めた。
「詳しいことは話せないとのことですが、ホテルに犯行時間に来れるということがわかったみたいです。アリバイが崩れたようです。あの俳優はホテルに来たことは認めたようですが、自分は殺していないとの一点張りらしいですよ。」
由美子も興奮気味に話した。
「この期に及んで往生際が本当に悪い男ですね。」
「それであの俳優は今どうしていますか。まだ警察ですか。」
松田響輝はそう聞いた。
「証拠不十分で釈放されています。」
「そうですか。つまりアリバイは崩れたが、殺人の決め手はないのですね。それじゃあの俳優は何をしていたと言っているのか分かりますか。」
「美鈴さんと一緒に松田さんを殺すために、ホテルの控室には行ったが、既に美鈴さんは殺されていたと言っていたらしい。」
「二人共僕を殺したかったの。」
松田響輝は悲しそうにそう言った。
「あの俳優さんは美鈴さんと別れる条件に、松田さんの保険金を手切れ金にしようと思っていたのよ。美鈴さんからかなりプレッシャーをかけられただろうし、でもそれを逆手にとって邪魔な美鈴さんを、一緒に殺そうと考えていたに違いないわ。」
由美子はそう言って松田響輝の方を見た。そしてもう一言話した。
「でも真実がわかるのは時間の問題だわ。」
「まあ現時点でもすでに社会的にはかなりのダメージで、もう芸能界での仕事はできないだろう。しかしあの俳優がいくら美鈴さんが邪魔になったからって、殺せば一番動機のある自分に疑いがかかって、警察にじっくり調べられたら、ボロがでるくらいのことはわからなかったのだろうか。」
松田響輝はそう言って首を横に振った。
「きっと焦っていたのよ。」
川崎麗奈はあっさりそう言った。