次の日、あの俳優を逮捕したと、警察が記者会見を開いていた。一旦は釈放したが、アリバイが崩れ、保険金も美鈴の死によって受け取れること、社長令嬢との結婚のためにも美鈴が邪魔だったこと、これらの動機から、犯行を認めていないが、犯人であると確信して踏み切ったのである。

 松田響輝は自宅でその警察の記者会見を見ているときに、インターフォンが鳴った。しばらくすると母親が松田響輝の部屋に入って来て、美鈴のマネージャーが来ていて、応接室に通しているので、来て欲しいと告げた。

 応接室には松田響輝の父親と母親と美鈴のマネージャーがソファーに腰を掛けて、テーブルにはコーヒーが用意されていた。美鈴のマネージャーは松田響輝を見ると、立ち上がって深くお辞儀をした。そして顔を上げると、今回の事件について謝罪した。

「警察の話では美鈴さんが松田響輝さんを殺そうと計画していたみたいですね。気が付かなくて大変申し訳ありません。私の至らなさの他なりません。なんとお詫びして良いのやら……。」

「まあまあ、あなたのせいではありません。とにかくお座りください。」

松田響輝の父親はそう言って、マネージャーを座るように促した。

「実はこの度の事件の真相を警察から詳しくお聞きしました。松田さんにはその内容をお伝えする義務があると思いますのでお話します。」

 マネージャーはそう前置きしてから、深く深呼吸して話し始めた。

「松田響輝さんには大変ショックなことだと思います。しかし美鈴さんはお金に目が眩んで、保険金欲しさに松田響輝さんをスパナーで殴り、死んだと思ったみたいです。だから万が一自分の姿をホテルの従業員や客に見られていたことのことを考えて、人目につかないところに捨てようとしたのです。」

「それじゃあ僕をあの場所に移動させた後、もう一度ホテルに戻ったのですか。でもなぜ?」

「いいえ、美鈴さんはホテルに戻ろうとしたのではないのです。その時思ってもいないことが起きたのです。」

投稿者

ほたる

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