そう言ってマネージャーはコーヒーを一口飲み、続きを話しました。
「美鈴さんの腕力では松田響輝さんを車に乗せたり、降ろしたりするのには時間がかかったのでしょう。そのためそれを見ていた、あの俳優がそっとその間に車の後部座席に忍び込んでいて、美鈴さんが松田響輝さんをあの場所に降ろした後、クロロフォルムで気を失わせ、ホテルの控室まで美鈴さんを運んで、そこで絞殺したんです。」
「松田響輝さんの控室で美鈴さんが死んでいれば、自分より死んだ松田響輝さんが疑われると、浅はかに思ったのでしょう。美鈴さんも俳優さんも死んでいると思っていたが、幸運にも助かり計画が崩れて行ったのらしい。まあ、自業自得ですね。」
「そうですか。そう警察は言っていたのですね。」
松田響輝の父親はそう言った。全員しばらく黙っていた。
少しして気分が変わったように、マネージャーは明るい声で報告を始めた。
「実は私はもう少しして、美鈴さんの四十九日が過ぎたら、事務所を辞めようかと思うのです。今回のことできっぱりと踏ん切りがつきました。」
「ええ辞めてどうするのですか。」
松田響輝は驚いてそう聞いた。
「私には離婚した元夫がいます。元々とても優しい人で、決して嫌いで別れたのではなく、私がこの仕事に打ち込みたいとわがままを言ったので……。その元夫がこの事件を知って、連絡してきたんです。もう一回復縁を本気で考えてくれと、やはり私には家庭の主婦が向いているみたいです。」
「そうですか。少し残念ですが、それもいいかもしれません。この仕事は何年されたのですか。」
松田響輝の父親はそう聞いた。
「二年半です。はじめから美鈴さんにつかせていただきました。」
マネージャーはその後、美鈴さんとの思い出話をして帰っていきました。