由美子の父親は半ば呆れたように、服部弁護士に確認した。
「それはあくまでも武中雄太氏は美鈴さんを殺していないと信じているのですね。」
「はいそうです。彼は無実です。」
「あの、私たちに何が聞きたいのですか。」
由美子は早く本題に入って欲しくてそう言った。
「もちろん彼の無実を証明するための証拠を探しているのですよ。あなた方も事件の日あのホテルにいらしたのですね。ホテルの中で武中雄太氏に会いましたか。」
「いいえお会いしていません。会っていればすぐに警察に言っていますよ。」
由美子はそう言った。
「そうですよね。あなたの他のご友人たち、松田響輝さんの新曲記念パーティーに参加した方々にもお話を聞いています。今のところ武中雄太氏に会ったという方はいません。まだ全員に聞いたわけではないですが、誰も彼に会っていないということは、彼はホテルに入っていないのですよ。」
服部弁護士は誇らしげにそう言った。
「あの、服部弁護士失礼ですがその理論はどうかと思います。武中雄太氏は誰にも見つからないように、注意深くホテルに忍び込んできたかもしれません。それに美鈴さんもホテルに忍び込む姿は、誰にも見られていませんよ。美鈴さんは死体が見つかるまで、静岡にいるとみんな思っていたのですよ。」
由美子はイライラして少し早口でまくし立ててしまった。言い終わった後、少し締まったと思ったが、もう遅かった。服部弁護士は目尻を上げて、半ば感情的に反論した。
「彼はホテルに入る前に女優さんに話仕掛けられて、ホテルに入れなかったのです。その女優さんがその時来ていたドレスも、アクセサリーも彼はしっかり記憶しているのですよ。それをあなたはどう説明するのですか。あの女優が嘘をついているに決まっている。」
服部弁護士はそう言いながら、顔を真っ赤にしてなお一層興奮しているように見えた。それを由美子の父は、なだめるようにまあまあと落ち着かせた。
「服部弁護士その女優さんの服装や、アクセサリーはホテルの中で確認しておいて、もしもの時はその人といたというアリバイを作っていただけじゃないのですか。その可能性についてはないのでしょうか。」
由美子の父親はできるだけ穏やかに話しました。