服部弁護士はびっくりしている三人を見ながら、話しを続けた。
「ただ、武中雄太氏はホテルには入っていないと主張している。彼は予想外なことが起こったらしい。ホテルの近くの人目につかない所に車を停めて、ホテルの入り口に向かっている途中で、華やかなパーティードレスを着た、知り合いに女優に会い、話しかけられ足止めされたと言っている。だからその女優に聞いてほしいと警察に言った。」
「じゃあ美鈴さん殺しのアリバイがあったのね。」
由美子は反射的にそう言った。
「その女優さんがそのことを証言してくれたら、そう言うことになったのですが……。」
「えっ!どういうことですか。」
「その女優さんはその時間は松田響輝さんの新曲記念パーティーの会場でいたため、化粧室に言ったり、芸能関係者にあいさつ回りをしたりしたので、じっとしていたわけではないが、ホテルからは出ていないし、武中雄太氏とも会っていないと証言しています。」
「それじゃあ、武中雄太氏は苦し紛れにそんな嘘をついたのね。」
由美子の母親はそう言った。
「しかし、武中雄太氏はその女優さんのそのとき着ていたドレスや、身に付けていたアクセサリーの細々としたところまで、しっかりと証言している。その女優さんはパーティー会場の中でも、化粧室でも何人かと話していて、確かにホテル内にはいただろうと言われている。しかし……。その日は招待された人も多く、何時にどこに誰がどこにいたのか、はっきりしたことはわからないのである。」
聞いていた三人は今一つ理解できないような顔をしていた。
「つまり、パーティー会場の中で多くの人と話しているが、ホテルを抜け出せないわけではなかった。つまり彼女は武中雄太氏のアリバイをなくすために、ホテルの近くで待ち伏せていたのだと、私は確信している。」
「はあ?」
由美子はこの弁護士はなんて思い込みの強い人なんだろうと思った。由美子の両親も同様の感想を持ったみたいだった。