警察はいったい何を考えているのだろう。今更美鈴さんの出生のことを聞いて回ってるなんて……。松田響輝は不思議に思いながらも、自分にとって美鈴さんのことは過去のことで、しかもとても嫌な記憶となっている為、蒸し返されたくはなかった。

「美鈴さんには申し訳ないのですが、僕は本当に知らないのですよ。お役に立てなくてすみません。」

「そうですか。わかりました。あの話は変わりますが、松田響輝さんは武中雄太氏とは、同じ芸能事務所でしたね。個人的なお付き合いは全くなかったのですか。彼の出生や家族の話などは聞いていないですか。例えば妹さんの話とかは聞いたことはないですか。」

 刑事はしつこいなと松田響輝は思ったが、それにしても妙なことを聞いてくるなあと思って、不思議そうな顔をしたので、刑事はなお一層続けて話した。

「不審に思われているみたいですね。本来はあまり言えないのですが、武中雄太氏は最近、美鈴さんを自分の実の妹だと主張しているのですよ。だから彼は美鈴さんを殺す動機はないと訴えているのですよ。私たちも俄かには信じられないのですよ。二人は同じ児童施設に居たことがあるのです。」

「まさか……。信じられない!事実ですか。」

「はっきりしないのです。戸籍を調べても両親が誰なのか、二人共わからないし、それを証明することは、武中雄太氏自身にもできないのですよ。」

 松田響輝はこの期に及んで、あの俳優は言い逃れを考えて、とんでもないことを言い出したのだなと思った。

「僕はその話は嘘だと思いますよ。二人が兄妹だなんて……。だって美鈴さんはあの俳優さんが社長のご令嬢と婚約すると知って、激怒していたって聞いていますよ。本当に兄妹ならそんなに怒らないでしょう。」

 刑事は不審な顔をした。

「あのその話は誰から聞いたのですか?社長のご令嬢との婚約に激怒しているって。」

「誰って、美鈴さんのマネージャーさんですよ。」

 刑事はニヤリと口を歪めると、わかりましたと頷いてそそくさと帰っていきました。

 

投稿者

ほたる

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