松田響輝の家に二人の刑事がやって来た。その刑事達は松田響輝に、美鈴と付き合っていた時の話を、聞かせて欲しいと言ってきた。松田響輝にとってはその当時のことを思い出すだけで、胸の奥がズキズキと痛み始めて、とても苦しい思いになった。
「刑事さん今更なんでそんな話を聞きに来るのですか。僕にとってはただ苦いだけの思い出です。できたらもう忘れたいので……。」
「申し訳ありません。どうしても確認しないといけないことができまして、お気持ちはわかりますが、どうかご協力ください。お付き合いされていた時に、彼女の出生について何か聞いていませんか。」
「僕は美鈴さんとはお付き合いしていませんよ。彼女の出生ですか?施設で育ったと聞いていますが、それはもう世間の人も知っていることではないですか。」
「施設の頃の人間関係などもっと詳しいことを話していませんでしたか。どんなことでもぃいんです。覚えていることはありませんか。」
「ええ、人間関係ですか……。う~ん。そう言えば、一度だけまだ彼女がデビューしてすぐ頃、打ち合わせで一緒になった時に、彼女のスマホがテーブルの上に置いていたんですが、そこに着信があり、彼女がすぐにスマホを持って、席を立ったのですが、ちらっと名前が見えたのですが、その名前が『兄』ってなっていたよに思います。ただ見間違いかもしれません。」
「本当ですか?」
「だから、ちらっとしか見ていないので、見間違いの可能性は本当にありますよ。」
「その電話の時に、誰からって聞かなかったのですか?」
「そんなことは聞きませんよ。それよりそんなことが今度の事件といったい何の関係があるのですか。それにこの事件はあの俳優さんが美鈴さんを殺したのですよね、あの俳優さんが三年前の事件も美鈴さんと二人で、仕組んだことだったのでしょう。」
「三年前の事件はその通りです。しかし美鈴さんの絞殺は否認しています。だからこうしてまだ調査しているのですよ。」
「そうなんですか。でも他に疑わしい人はいないのでしょう?」