響輝と父はしばらく黙って考えていた。父は人間関係を書き込んだ紙に俳優と美鈴を兄妹と書き込んだ。そして響輝に向かって話し始めた。
「少し考えにくいが、もしあの俳優が主張していることを信じた場合、美鈴さんとは兄妹であり、二人は常にそのことを隠して芸能界で助け合いながら生きてきたとしよう。そうすると三年前の事件が起こった時も当然、仲が良く助け合っていたと考えられます。」
「お父様、そうするとどうなるのですか。」
「三年前の事件で実行犯は美鈴さんだ。あの俳優は配達した店員に顔を見せている。美鈴さんは声だけだった。テープか何か流したのだろう。もちろん二人で計画したことだろう。」
「美鈴さんが女性アイドルとその恋人を殺したのですか。」
響輝は父を見たままとても悲しそうな表情になった。父はしばらく黙って響輝を見つめていました。そしてしばらくして話を続けた。
「そうなると美鈴さんを殺した犯人は、三年前の被害者の関係者による復讐っていう可能性もある。まだ可能性の話だが、そうなると美鈴さん殺しの捜査は、初めから考え直さないといけないですね。」
「でもお父様、あの俳優も美鈴さんもあの日はアリバイを作って、ホテルの僕の控室に忍び込んできたのですよ。それを事前に知っていなければ、美鈴さんを殺すことはできないです。しかも俳優も僕の控室に向かっていたのですよ。もし鉢合わせていたら大変じゃないですか。」
「でもそれを知ることができれば、そのアリバイを逆に利用して美鈴さんを殺して、その犯罪をあの俳優の仕業に見せることは、簡単だったんじゃないですか。」
そう言うと父はじっと事件の人間関係図を見ていたが、ふっと何かに気づいたような表情になり、紙をもう一枚出してきた。