山村かおるは親の反対を押し切り一人で娘を生んで育てていたが、売れない役者の彼氏もまた日々少しでも彼女と娘のためにと、役者の勉強の傍ら日々アルバイトをしながら、僅かではあるが彼女たちへの仕送りをしていた。
山村あみがさらわれた日、役者の彼のもとにドラマ出演の話が舞い込んだ。テレビのドラマの主人公の友人役だった。セリフは多くないが。連続ドラマで毎回必ず出演するというのである。実はその役をやるはずだった俳優の不祥事が発覚して、急遽代役が必要になった。できれば新人のフレッシュな役者で行きたいとの監督から要望があり、彼が抜擢された。
彼にとっては千載一遇のチャンスであった。すぐに山村かおるに連絡しようと電話をした。
「もしもしかおる、実は今日……」
「ごめんなさい、今取り込んでいて……」
そのまま電話は切れた。
彼は本能的に何か良くないことがかおると娘の身に起きたことを直感した。もう一度電話しようかとも思ったが、彼女の電話の様子を考えると、それより彼女の家に急いで駆けつける方が良いと判断して、彼女の家に向かった。
彼女の家に到着したが、家には誰もいなかった。嫌な胸騒ぎがして近隣に彼女たちがどこへ行ったか知らないかと、尋ねて歩いた。