その日山村家のお手伝いの者は、本当に車に轢かれ救急車で搬送されていた。しかも人気のない路地裏で普段は人も車も通らない所でひき逃げされたため、しばらく事故があったことにも誰にも気づかれず、お手伝いの者は朦朧とした意識の中で、大通りの方に這っていこうとしていたが、途中で意識を失い、1時間近く放置されているのを、たまたま通りかかった人に発見されて、瀕死の状態で搬送された。

 そのため山村家ではお手伝いの者が事故に遭ったことも、見知らぬ女性が山村あみを連れ去ったことにはしばらく気付かなかった。

 事故の知らせが仕事中の山村かおるに入ったとき、彼女はすぐに保育園に娘を迎えに行った。しかし山村あみは見知らぬ女性と保育園を出た後だった。

 山村家は祖父母の時代から建設会社を経営する実業家の家で、山村かおるはその家の一人娘であるため、大学時代から経営の勉強をして会社の経営にも携わっていた。そんなやり手の彼女だが、その時未婚のまま母になり、一人で娘を育てていた。

 彼女は大学時代から交際していた一つ年上の彼氏がいたが、彼は役者を志していたが無名のままだった。そんな男に大事な山村家の一人娘は嫁にやれないともう反対されて、ほぼ無理やり別れさせられることとなった。その後彼女の妊娠がわかり、彼女はこの子は一人で産んで育てると言い張り、実家を出て一人で子育てと仕事をしていた。

 彼女にとって娘のあみは何物にも代えがたい存在であることは間違いなかった。

 

投稿者

ほたる

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