川本修次はお嬢様が落ち着くのを待って、静かに話し始めました。

「お嬢様、彼とはどこで出会ったのですか。」

お嬢様はしばらくしてから、ゆっくりと話し始めました。

「あれは1年位前でした。父の会社の創業八十周年の祝賀会を行ったときに、政治家や財界の方やマスコミの方芸能界の方も、多く来られていて、その時に彼も来ていたのです。彼に私の父が、私が以前から彼のファンのためもしよければ、この後もお食事などをご一緒できれば、うれしいですと言い。そこから交際が始まりました。」

「そうですか。その時は美鈴さんのことは聞かなかったのですか。その当時噂になっていたと思います。」

「もちろん噂は知っていたので、最初に聞きました。そしたらさっき言ったように、美鈴さんとは男女の関係は一切ないと言たの。だから私は彼の言うことを信じたのよ。本当に彼は私との交際を否定していたの。」

「お嬢様、私の言うことを確かめるのであれば、警察に行って聞いてみてください。それにお願いがあります。彼との交際をしていたことと、婚約していたことを話していただけませんか。」

「確かに事実は確認したいのですが……。先生はもしかして彼が美鈴さんを殺したと疑っているのですか。彼にはアリバイがあります。彼はその日別荘でドラマの台本を持って行って、台本を覚えたり、役作りに没頭していたのよ。しかも証人もいるのよ。」

「彼はそう言っていたのですか。別荘で3日間一人で、ドラマのために缶詰めになっていたって、言っていたのですね。でも、それも嘘ですよ。彼が警察で証言した内容では、3日間お嬢様や美鈴さん以外の女性と一緒に過ごしていたのですよ。こんなことは言いたくないのですが、あの人は平気で嘘をつく人なんですよ。」

もうお嬢様は泣くことはなく、平然と川本修次の話を聞いていた。

「それに以前は美鈴さんから多額のお金を貢がせていたのですよ。そのお金は松田響輝さんが美鈴さんに貢いで、そのまま彼に渡っていったのですよ。」

「わかりました。私は自分の目で真実を確かめて、先生の話が本当なら私もこれまでの彼との経緯を、すべて警察で証言します。」

「ありがとうございます。あの重ね重ね心苦しいのですが、私たちは松田響輝さんの無実を信じています。何か新しい事実がわかったら教えてください。あのそれからお辛いと思いますが、彼とは今までどおりに接していただけませんか。あなたが疑っていると察したら、あなたの身にも危険が及びます。」

「わかったわ。そうするわ」

 川本修次は豪邸を出て帰宅した。お嬢様はそのあとすぐに警察に行って、川本修次に言われたように、事実を確認して、これまでの経緯を話した。

投稿者

ほたる

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