松田響輝の隣には由美子が、反対側の隣には川崎麗奈の彼氏でその隣は川崎麗奈であった。そして残りの席にはもちろん先輩四人が座った。

「あの事件のことはまだ記憶が途切れ途切れなんだが……。多分僕を殴ったのは美鈴さんだと思うよ。」

「顔を見たの?」

由美子は聞いた。

「いや突然だったのでなにも見なかった。しかし、一瞬美鈴さんがいつも付けている香水の匂いがしたんだ。彼女は自分の好みの香水を調香師に作らせていたので、あの香りは彼女だけの香水なんだって、昔話していたことがあったから。」

「なんで美鈴さんが松田さんを殴ったりしたんでしょう。」

「僕にもわかりません。恨まれていたのでしょうか。僕はそんな覚えはないのですが……。」

松田響輝は顔を曇らせて俯いた。

「松田さんそんなに思いつめないでください。殴ったのは美鈴さんかもしれませんが、何か事情があったのかもしれません。美鈴さん自身も殺されているのだから、ただならぬことが起きたのでしょう。それも犯人が捕まればわかります。」

山口俊也がそう言って、松田響輝を慰めた。

「それに犯人を見つけるために、聞きたいことがあるんだ。松田さんと美鈴さんは以前交際していたのでしょう。」

「交際って言っても僕が交際していると思っていただけで、彼女は僕のことなんかなんとも思っていなかった。だって彼女には他に恋人がいたのだから、それに僕は彼女とは二人きりで会ったことはない。だから交際なんて言わないで……。」

松田響輝は慌ててそう言って首を振った。

「いや、交際の有無ではなくって、その頃生命保険をお互いを受取人にして、掛けていたって聞いたのですが、解約したのですよね。それは確かですか。」

「ええ、確かですよ。彼女は解約したって言っていたから、それに解約金は返してもらったから。」

 松田響輝はそう言った。

投稿者

ほたる

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