山口俊也は松田響輝に続けて聞いた。
「契約の解除した書類は届いたのですか。」
「えっ!書類ですか。そんなもの届くのですか。僕の手元には来ませんでした。でも山口先輩それが何か今度の事件に関係あるのですか。」
「わかりません。わかりませんが、今度の事件って初めからわからないことばかりです。その中でも一番わからないのは、美鈴さんがなぜ松田さんを襲ったのか。その美鈴さんも誰かに首を絞められて殺された。それも松田さんの控室でのことでしょう。」
山口俊也の話を聞いていた、松田響輝は首を横に振って言った。
「僕にはどうして美鈴さんに殺されかけたのか。思い当たることはないです。もう知っていると思いますが、美鈴さんとは去年いろいろありましたが、美鈴さんから謝罪もあって、お互いにわだかまりはないはずですが……。」
こんな会話をしていた時、そこに松田響輝の両親がやって来た。
「折角の退院祝いのパーティーなんだ。事件の話はそれくらいにして、もっと楽しい話をしたらどうですか。響輝の容疑も晴れたことだし、あとは警察に任せておけばいいんだよ。さあみんなは今日はしっかり食べて行ってください。ここの料理は一様三ツ星レストランのシェフに、作ってもらったものですから、楽しんでいただければ嬉しいです。」
「それもそうですね。お父様じゃあ僕たちは食事を楽しみます。」
「じゃあ私たちは皆さんのお邪魔にならないように、あちらに行きますね。それから今夜はテレビなどによく顔を出している、有名人も多く来ているので、サインなどももらえると思いますよ。」
松田響輝の両親がその場を立ち去ると、みんなは食事を食べ始めました。彼らのテーブルの側を三十歳位の女優さんが二人で、歩きながら会話しているのが聞こえていた。
「ねえ、今度の事件って三年前の事件に似ていない?」
「三年前って若い女性アイドルが服毒自殺した事件でしょう。似てないわよ。」
「だって事件当時は自殺か他殺かわからなかったでしょう。それに自殺ってことになったのは、殺人の動機のある人たちのすべてに、アリバイがあったから自殺ってことになったのよ。それに……。」
「それになに?」
「それにその時動機のあった人って……あの人達よ。」
「ああ、そうだったわね。あの時もあの俳優さんと、美鈴さんは別荘に居たんだよね。」
「そうよ。美鈴さんと一緒に居て、近くのレストランの店員が二人のアリバイを証言しているわ。」
二人の女優さんがそんな話をしながら、通り過ぎていたので、由美子たち八人にはその会話がしっかりと聞き取れた。