由美子たち七人は松田響輝の退院パーティーを終えた後、約束していた喫茶店に着いた。二人の女優はすでに店の前に立って待っていた。その喫茶店に入ると、奥の個室に入って行った。二人の女優はここの喫茶店の常連のようで、店の店員はすぐ案内してくれた。二人の女優は店員に人数分の紅茶を注文して、持ってきてもらうと、しばらくは誰もここに来ないように言った。

「三年前の事件のことでしたね。亡くなったのは若い女性アイドルだった。彼女はデビューしてすぐに人気が出たため、すぐにトップアイドルの仲間入りをしたの。でもねそうなってくると、いろいろな誘惑も多くてね。ある俳優さんから交際を申し込まれて、彼女は交際する気はなかったようだが、その俳優は週刊誌にそのアイドルと熱愛中という噂を流した。」

 そこまで話すと女優は紅茶を一口飲んで、しばらく考えていました。まるで何かを思い出しているように見えた。そして顔を上げて話の続きを始めた。

「その噂はあっという間に世間に広がって、業界でも交際が真実のように言われ、その俳優は交際中の恋人であるとまわりにもいいまわった。彼女はその俳優と交際する気は全くなかった。しかも彼女には地元に交際していた恋人がいた。」

女優は悲しそうな顔でそう話した。

「彼女は地元の恋人との関係が、噂によって壊れていったのですか。」

由美子は女優にそう聞いた。

「いいえ、あの二人の仲はそんなことでは壊れなかったわ。それくらい深い絆で結ばれていたのよ。でも……。」

「でも、なんですか。」

由美子は聞いた。

「その俳優にも交際中の恋人がいることが知られた。だからその恋人と別れさせるために、女性アイドルを騙して無理やりホテルに連れ込んだ。そしてその時に写真をとって、それを彼女の恋人に送り付けた。それで恋人との仲は壊れるはずだった。」

「じゃあ二人は別れなかったの?」

川崎麗奈は聞いた。

「別れなかったんだよ。それどころか二人はその俳優を強姦罪で訴えようとしたんだ。しかもそのことを週刊誌にも訴えようとしていた。なのに……。二人で服毒自殺したのよ。彼女のコンサートの会場の控室でね。今度の松田響輝さんの事件と似ているでしょう。」

 その女優はそう話すと、目に涙を浮かべていた。

投稿者

ほたる

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