三年前の事件のことを聞いたみんなは、絶対にあの俳優が犯人だと確信した。
「あの松田さんと美鈴さんが、お互いを受取人にして掛けていた保険金のことはもう確認したのかな。」
山口俊也は松田響輝に聞いた。
「ええ、確認はしたのだけど、それがおかしいんだ。美鈴さんが掛けた保険金の受取人はあの俳優さんだった。そして僕の掛けていた美鈴さんを受取人にしていた、保険は解約されていなかったんだ。つまり今も僕は保険をかけ続けていることになっていたんだ。」
そう聞いた山口俊也はもう一度訪ねた。
「それじゃあ受取人を変えて保険はそのまま掛けていたんだね。」
「それが違うんです。美鈴さんが掛けていた保険の受取人ははじめから、あの俳優さんです。僕の名前ははじめからなかったのです。」
「それって松田さんと付き合っていた時から、あの俳優さんとも付き合っていたのですね。」
川崎麗奈がそう言った。
「美鈴さんとは僕の片思いだったのですよ。付き合っていると思っていたのは、僕だけだったみたいです。だからその時からあの俳優さんが、美鈴さんの本当の恋人だったのですよ。」
「そうですか。それは何というか……。嫌なことを聞いてすみませんでした。」
川崎麗奈は申し訳なさそうにそう言った。
「お気になさらないでください。もう昔のことですし、僕はなんともとも思いませんでしたよ。」
松田響輝はそう言いながら、チラリと由美子の方を見て微笑んだ。その視線に気づいた由美子は戸惑っていたが、微笑みを返して視線を合わせた。
「そうなると美鈴さんは保険金目当てで、松田さんを殺そうとしたとも考えられないか。それなら美鈴さんが松田さんのホテルの控室に来たのもわかるわ。」
「そんな!まさか。」
松田響輝は首を大きく振ってそう言った。
「松田さんには悪いけど、あり得ると思うよ。もし美鈴さんが誰かに殺されなかったら、そのまま誰にも気付かれずに、静岡のホテルに戻っていたら、彼女もアリバイが成立していたはずだ。しかしあの俳優に殺されたので、失敗に終わったけれども。」
山口俊也はそう言った。