ミステリー同好会の部長は山口俊也の話を聞いていて、何か気づいたようだった。

「美鈴さんが静岡のホテルに泊まっていたっていう、アリバイを作っていたのなら、美鈴さんを殺した犯人はそのことを知っていたってことだろう。だから美鈴さんが犯行計画を話していた人ということだよね。だったらおかしくないですか。あの俳優さんが犯人だってことは、最近はあの二人の仲は険悪だったのでしょう。美鈴さんのマネージャーさんがそう言っていたんだろう。」

「そうですね。自分を捨てて社長のご令嬢と結婚して、逆玉に乗ろうとしている男とそんな殺人計画を共有するはずはないわね。」

由美子がそう言った。

「でも、美鈴さんがホテルの松田さんの控室に、忍び込むことを知っていた人が、犯人ってことだよね。そんな人いるのかな。やはりあの俳優さんしかいないと思います。いくら最近不仲とはいえ、まだ別れていないのであれば、言葉巧みに美鈴さんに松田さんを殺して、保険金を盗ろうとそそのかしたのかもしれませんよ。」

川崎麗奈の彼氏はそう言った。

「つまり君は美鈴さんが松田さんを殺そうとしたのも、あの俳優さんの計画だったと考えているのですね。そしてその計画は邪魔になった美鈴さんを、どさくさに紛れて殺し、美鈴さんの保険金を受け取る計画だったのです。つまり邪魔者を消して、お金を手に入れる一石二鳥というわけですね。」

部長はそう言った。

「しかし、それならあの俳優さんは、やっぱり馬鹿だわ。一番疑われているし、社長令嬢との婚約も破談よ。しかも警察にもずっと目を付けられて、仕事もかなり影響が出ているみたいだし、好感度もがた落ちじゃない。」

川崎麗奈はそう言った。

「でも人の噂も七十五日、すぐ忘れられてまたしれっとテレビや映画に出て来るわよ。」

由美子はそう言った。

「それは無理ですよ。彼にはもう後ろ盾はないですし、かなりお金にも困っているでしょう。しかもこの事件のことを噂しなくなるまで、待っていたらきっと世間からも忘れられてしまいますよ。最近は次から次に新人も出てきて、入れ替わりも早いし、あの俳優さんのキャラの人も多いですから、変わりはいくらでもいます。それはもちろん僕も同じですが……。」

松田響輝はそう言うと由美子の方を見ていました。由美子の方も複雑な表情でした。

投稿者

ほたる

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