レストランに松田響輝と山口俊也と店員はついた。
「まあ席について僕の話を聞いてください。」
「こちらこそお聞きしたいことがあるのです。あなたもあの俳優がトリックを使って、アリバイを作って美鈴さんを殺したと思っているのですね。僕たちも美鈴さんを殺したのはあの俳優だと思っている。いいえ確信しています。」
山口俊也はそう言った。
「あの僕が気になっているのは、配達しているときに一度もあの俳優さんの顔を見ていないのです。」
店員はそう言った。
「あの別荘にはあの日、他に女性がいたようなんですが、どんな方だったのでしょうか。」
山口俊也は質問した。
「どんな方かわかりません。」
「お会いにならなかったのですか。」
「はい。声は聞いたのですが……。」
「でも配達したものを受け取って、お金を貰ったのでしょう。」
「いつも配達した物は玄関の横に置く場所があって、そこに置いたら奥から、あの俳優さんがありがとうって声がしました。それにあの俳優さんに話しかけている女性の声が聞こえていた。それに代金はまとめて振り込みなんです。」
店員はそう言って考え込んでいた。
「今いつもって言いましたが、三年前の事件の時も、あの俳優の顔は見なかったのですね。美鈴さんの顔も見ていないのですか。」
松田響輝は店員の顔を見ながら聞いた。
「いえ三年前は僕が配達に行ったとき、あの俳優さんは庭のポストから郵便物を出すところだったのです。それに部屋のなかからは美鈴さんの歌が聞こえてきた。俳優さんは美鈴さんは、今新曲の練習をしていると言っていました。」
「つまり三年前の事件はあの俳優や美鈴さんとは関係なかったのですね。」
山口俊也は残念そうにそう言った。
「わかりません。美鈴さんの姿は見ていません。」
「えっ!あなたは三年前の事件は美鈴さんが犯人だというのですか。」
松田響輝は困惑を隠せない様子だった。
「わかりません。わかりません。この事件があるまでこんなことは考えなかったのですが、今度のことで急にそのことが気になって……。」