しばらくするとパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。そして五~六人の警察官がドアから入って来た。そしてリビングの女性の遺体を見た彼らは、一瞬息をのんで固まった。それほどまでに酷い状態だった。そのうち一人の刑事が口を開いた。
「これはいったいどういうことですか。説明してください」
「私は立石和行と言います。この遺体はたぶん女優の夕月和葉さんです。そして私は彼女のマネージャです。私がここに来た時にはもうこの状態でした。この方は和葉さんの旦那様で俳優の夕月光希さんです。彼も私が来た時からこの状態でした。何が何だか全く分かりません。とても信じられません。なぜこんなことに……」
立石は今にも泣きそうな表情で、首を大きく横に振っていた。
「申し遅れました。私はこの事件を担当する山川です。こちらは部下の谷山です。とりあえず夕月さんを連行したいのですが、この状態では……。誰か同行していただける方はいらっしゃいませんか。彼はあなたの事務所の俳優さんですか」
「いいえ、違います。違いますが、彼の事務所に連絡して誰か来ていただきます」
「お願いします。立石さん奥で少しお話をお聞きしたいので、事務所に連絡が付きましたら、奥に来ていただけませんか」
「わかりました」
二人の刑事は奥の部屋へと移っていた。少し遅れて立石も奥の方に向かった。
奥には応接室があり、二人の刑事がすでに座って何か話していたが、立石の顔を見るなり話をやめて、彼らの前に座るように促された。
「あの夕月夫妻のことを少しお聞かせ願えますか。最近の夫婦仲とか」
「刑事さん、あのご夫婦はまわりがうらやむほどの仲の良い夫婦ですよ。だからこんなことがあるなんて、今も何か悪い夢を見ているようです」