山村社長がテーブルに置いた封筒を見て、山川刑事は不審そうに彼女の顔を見た。
「この封筒は何ですか」
「中を見ていただいたらわかりますよ。どうぞ」
山川刑事は封筒の中から、何枚からの書類を出した。書類には何枚かの写真も添えられていた。
「この写真は……」
「そうですよ。和葉さんの不倫の証拠ですよ。そこに写っている男性は、夕月と結婚する前から彼女が付き合っていたようです。二人で夕月を騙してお金を巻き上げるつもりなのよ。なんて性悪な女なの。だから興信所に頼んで証拠を見つけてもらったのよ。それを夕月に見せ今度こそ離婚させるつもりだったのだけど」
「だったのけど、それを見せる前に夕月さんは怒って帰ったってことですか」
「いいえ、書類は見せました。でも彼はそれでも和葉さんのことは愛していると、だから興信所を使ってこんな真似する、私たちを絶対許さないと怒りだしたのよ。そこからはもう何を言っても聞いてくれなくて、話にならなかったわ」
「夕月さんはずいぶん和葉さんにぞっこんだったようだね」
刑事はニヤリと笑ったが、山村社長は苦々しい顔をしていた。
「ところで刑事さん、夕月は本当に和葉さんを手にかけたのですか」
「いやまだ詳しいことは検死の結果を見ないとわからないが、たぶん和葉さんは三時過ぎには亡くなっていたようだから、夕月さんは犯人ではないと思いますが、彼は何一つ証言できない状態だったので、どうしてああいう状況になったのか、全く分かりませんがね」
「そうですか。じゃあ和葉さんが亡くなった時には、夕月はまだ事務所に居ましたから、彼女を殺すことはできないわ。きっと彼女の男性関係のトラブルか何かじゃないのかな」
山村社長は少し笑ったように見えた。
「そうですね。ただし今社長が言ったことが本当ならの話ですが……」
「刑事さんそれはどういう意味ですか。本当に決まっていますわ。何ならうちの事務所の他の方にも聞いていただいたらわかります」