山村社長にそう言われて、二人の刑事は顔を見合わせたが、山川刑事は社長を見ながら言った。

「ありがとうございます。はじめから事務所の方にも確認するつもりでした。社長さんにそう言っていただけると、手間が省けます。できれば今からでも事務所にお伺いしたいのですが、よろしければ、事務所のマネージャーさんや事務員さんも交えて、一緒にお話を聞きたいのですが……」

「夕月には和葉さん以外の身寄りがいないので、神谷にはしばらく付き添っていてもらおうと思っています。それに夕月の今の状態では、事情を聞くのは困難だと思います。神谷には様子を見て話をさせます」

「わかりました。それで結構です」

 山村社長と二人の刑事は芸能事務所の方に移動することにした。

 山村社長達が事務所に着いて、事務所の応接室に事務員の川合が案内して、お茶の用意をして応接室に持ってきて、三人の前に置いて、応接室を出ようとした時に、山村社長が声をかけた。

「川合さん、刑事さんがあなたもこの席に居て、話を聞きたいらしいので、ここに座ってくれますか」

 川合は二人の刑事の顔を見ながら、緊張したように頬を引きつらせながら、山村社長の隣に座った。

「社長、いったい何かあったのですか。刑事さんがなぜここに、しかも私はいったい何を話せばいいのですか」

 山村社長はハッとして言った。

「川合さんには何も話していませんでしたね。実は和葉さんが亡くなりました」

「和葉さんがですか。事故か何か……。まさか刑事さんが居るってことは、事件ですか?」

二人の刑事は同時に無言で小さく頷いた。

「それじゃあ、夕月さんはひどくショックを受けてらっしゃるでしょうね。さっきまであんなに和葉さんのことを愛している。絶対に離婚ななんてしないって、社長と揉めていたのに……。」

投稿者

ほたる

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