二人の刑事は川合の話に納得をしたが、谷山刑事は今度は夕月夫婦のことについて続けて質問した。
「御夫婦仲は本当に良かったのですか、ここの社長さんの話では和葉さんはかなり男性関係が派手でしたよね。しかも浪費もひどかったようですね。そんな彼女のことを本当に光希さんは、愛し続けられたのでしょうか。日頃ちょっとした不満とかは言っていなかったのでしょうか」
川合は谷山刑事の質問に驚き、彼の目を見ながら必死で首を振りながら訴えた。
「光希さんは和葉さんを本当に愛しています。自分の命よりも大切に思っていたと思いますよ。だから和葉さんも光希さんに甘えていただけです。だから二人共お互いをかけがえのない存在だと思っていましたよ。だから、社長に別れろと言われても、絶対に別れないって言ってました」
「そうですか。それでは夕月夫婦に強い恨みを持つような方に心当たりはありませんか。特に和葉さんに対して……」
「私は和葉さんのことはあまり知りません。私はここのただの事務員なので、光希さんや社長の話でしか分かりません。光希さんは良い方ですよ。いつも私にまで気を使ってくれて、気さくに声をかけてくださいます。確かに仕事柄ライバル的な方はいるでしょうが、強く恨まれる方ではないです」
「そうですか。ご協力ありがとうございました。これで質問は以上です」
「あのちょっと待ってください。光希さんは、光希さんは今どうしているのですか。社長も何も光希さんのことは話さないし……。まさか光希さんも殺されたのですか」
「ご存じではないのですか。光希さんは今病院に居ます」
「お怪我されているのですか」
「いいえ、どこも怪我されていませんが……」
谷山刑事は山川刑事の方を見た。
「和葉さんが殺されてかなりショックを受けられているようなので、詳しいことはお宅の社長さんに聞いてください」