二人の刑事は夕月夫婦の経済状況や、結婚に至るまでの話にも細かく聞いてから、事務所を後にしていった。
その後事務所に残った川合は山村社長に、夕月光希の状況を詳しく聞いていた。しばらくするとマネージャーの神谷も戻って来た。そして状況の説明を始めた。
「光希さんの診察は終わりました。今は鎮静剤で眠っています。警察の方も病院には来てましたが、もう少し落ち着くまで、事情聴取は待ってくれることになりました。とりあえず、社長に状況の報告をと思って、戻ってきました。事務所にも刑事さんが来られていたのですね」
「医者はなんて言っているのですか」
川合が聞いた。
「和葉さんのあんな姿を見たショックで、一時的にああいう状態になったようです。時間が経てば治るだろうと話されていました。警察の方もその話を聞いたので、待ちますと言ったのではないかと思います。こちらではどんな話を聞かれたのですか」
山村社長はしばらく下を向いて沈黙したが、顔を上げて話し始めた。
「「いろいろしつこく聞かれたわ。彼らの夫婦仲から始まって、経済状況や結婚に至るまで聞かれたわ。私が二人の結婚を、今でも反対しているって話したから……。まあでも想定の範囲だったわ」
「そうですか」
山村社長の話に神谷と川合は顔を見合わせて頷き合った。そして三人は今後の対応を検討し始めた。山村社長はマスコミ対応と今後のスケジュールの調整を、川合はスポンサー企業などに事情の説明を、電話などで行った。マネージャーの神谷は光希の部屋に行って、入院に必要な着替えなどを整えて病院に持って行った。