立石双葉が帰った後、山村社長と彼女が連れてきた大学教授は、顔を見合わせて笑った。その様子を見て夕月光希がニヤリとして言った。
「やっぱりその大学教授は偽物ですね。どこの役者さんですか。立石さんに軽い嫌がらせですか」
「そうですよ。あんな女が毎日あなたの家に来て、奥さん気取りでいるのが気に食わないのと、あなたに今もお金をせびっているのが許せないのですよ。でもあなたは立石さんを拒絶できないでしょう。だから私が考えたのよ。うまくいったわ。もうあなたは帰っていいのよ。今日はご苦労様。後でギャラは振り込んでおきますね」
そう言われて偽物の大学教授は帰っていった。
「光希さんこれからどうする。いつ芸能界に復帰するつもりなの」
「さっきも言ったように、もうしばらくこのままでいるよ。まだやらなきゃいけないこともあるから……」
「それはわかっているのだけど、少しずつ仕事しないといけないわ」
「まあ和葉の四十九日が過ぎるまでは喪に服することにするよ。それにどこか新しいとこに引っ越したいな。和葉の死に顔を思い出すとゾッとするよ」
「わかるけど、あなたは愛する妻を殺され、嘆き悲しんでいる夫なのよ」
「でも療養にとかなんとか口実付けて、別の家を用意して欲しいよ。偽の大学教授を用意できるのなら、なんとかできるでしょう」
「わかったわ。すぐに何とかするわ」
「ありがとう。頼んだよ」