山科社長と夕月光希がそんな話をしていると、二人の刑事がやって来た。
「刑事さん夕月和葉さんを殺した犯人がわかったのですか」
山村社長が玄関に入って来たばかりの刑事に問いかけた。刑事は一瞬二人で貌を見合わせて、戸惑った様子だった。
「犯人の手掛かりが全くありません。大変申し訳ありません。それでもう一度関係者に事情をお聞きしたいと思いまして、山村社長がご一緒にいらしていただけて助かります。夕月光希にもお話お聞きしたいのです。お邪魔してよろしいでしょうか」
山村社長は後ろを向いて夕月光希の許可を得ようとしていた。奥のソファーに座っていた夕月光希は軽く頷いたので、彼女は刑事の方に向き直ってあがって来るようにと促した。山川刑事と谷山刑事の二人は夕月光希の前に座った。少しして山村社長がお茶の用意をして入って来た。
「和葉を殺した犯人の手掛かりはなにもないのですか。刑事さんお願いです。私の最愛の妻の和葉を殺した犯人を一日も早く捕まえてください。それでないと和葉は浮かばれません」
「わかっています。私たちも全力で捜査しています。犯人を捕まえるためにも、是非ご協力ください。少しお話をお聞きしたいのです」
「もちろん犯人を逮捕するためなら、どんなことでも協力します」
「では早速お聞きします。和葉さんは誰かに恨まれていたようなことはなかったですか。もしくは何かトラブルに巻き込まれていたようなことはなかったですか」
「この業界に居るので、妬みや嫉妬は多く受けていたでしょうが、殺されるほどの恨みをかっていたとは思えません。それにトラブルに巻き込まれていたなら、私に相談しないはずはないでしょう」
「そうですか。心当たりはないですか」