二人の刑事は苦笑いをしながら、手帳にメモをしてから、さらに質問を続けた。
「夕月和葉さんと妹さんの関係はだいたいわかりました。あのそれから妹さんと和葉さんのマネージャーである旦那さんとの仲はどうだったのですか。御夫婦仲とマネージャーをしていたのなら、和葉さんとの仕事上でトラブルとかはなかったですか」
「僕が知る限り問題はなかったですよ」
夕月光希はさらりとそう言ったが、山村社長は不愉快そうな顔になった。そして話すのを戸惑っているようにも見えた。
「山村社長、気になることがあるのなら話していただけませんか。どんな小さなことでも良いです」
山川刑事はそう山村社長を促したので、彼女は心を決めたように口を開いた。
「私はあるホテルのラウンジで、双葉さんと見たこともない若い男性が、親しげにしているのを見たことがあります。その時は私も仕事の打ち合わせで、番組スタッフと一緒に居たのですが、店の中は薄暗く、私たちの方からは見えたのですが、双葉さんは私たちには気づかなかったようです」
「その男性はどんな方でしたか」
「かなり派手な感じの方でしたね。髪も茶髪で耳にはピアスが光っていました。持っていたカバンや着ていた服も高級なブランド物でした。それに時計も数百万円はしそうなものでした。しかもその男性に分厚い封筒を渡していたわ。あの男性は水商売の方ではないですか」
「人相は何か覚えていないですか」
「顔ですか。目鼻立ちははっきりしていたと思いますよ。体つきは背が高くすらっとしていましたが、結構筋肉質な感じもしましたね」
「へぇ~。結構よく観察されていたのですね」
「だって、双葉さんがべったりしていたから気になって、しょうがなかったのよ」