夕月光希が山村社長の袖を引っ張ってとめた。
「社長、自分の思い込みでものを言うのはやめてください。ただ男性と一緒にラウンジに居ただけでしょう。それに今の話は和葉の事件とは関係ないと思います」
「夕月さん事件に関係ないかどうかは、私たちがこれから考えます。双葉さんとその男性はどのくらいその時間に居ましたか」
「定かなことはわかりません。私たちがそのラウンジに着いたときには居ましたし、私たちも一時間ほどで店を出ました。その時はまだ二人はいましたよ」
「そうですか。ありがとうございます」
「刑事さん今日はもうこれくらいにしていただけませんか。僕はまだ体調がすぐれず、少し横になりたいのですが……」
「これは申し訳ありません。今日はこれで失礼します。しかし、また来させていただきます。和葉さんを殺した犯人を捕まえるために、是非協力していただきたい」
「もちろんです。早く捕まえてください」
二人の刑事は帰り支度をして立ち上がると、山村社長は彼らを引き止めた。
「すみません。少しこちらにお願いします。夕月にはまだ言っていないのですが、彼にこの家から出てもらいたいと思っているのですよ。一日でも早く和葉さんを忘れてもらって、元気になってもらって、仕事に復帰してもらいたいのよ。いいですよね」
「もちろんです。しかし、居場所はちゃんと知らせておいてください」
そう言い終わると彼らは帰っていった。