二人の刑事が帰った後、山村社長と夕月光希はまた今後のことについて話し合った。

「社長、できるだけ早く手頃なマンションでも探してください。できれば、この家も処分したいし……」

「気持ちはわかるわ。でもそんなに急いでことを進めたら、まわりに怪しまれるじゃない。あの女が亡くなってまだそんなに経っていないのに」

「大丈夫だよ。私たちは和葉を殺すことはできない。それに新しいマンションを探すのも、この家を処分するのも、あなたが表立って進めれば、あなたが夕月光希を早く芸能界に復帰させたいんだと、刑事たちは考えるさ。そのために今まで苦労して来たんじゃないか。ここまで来たら一気に事を運ぼう」

「それはそうなんだけど……」

「それに社長は和葉を嫌っていたが、殺しても何の得にもならない。殺すほどの理由はない。僕だって、和葉を殺しても何の得にもならない。動機はない。アリバイのある私たちに疑惑の目は向かないよ」

「刑事より立石和行と双葉がどう思うかよ。それでなくてもあの二人はなぜ、あなたではなく和葉が死んだのか、あなたを含めて私たちのまわりを、調べまわっているようなのよ。あまり大きく動くと用心されて、面倒なことになるんじゃない」

「大丈夫だよ。元々立石和行も、和葉、双葉、姉妹も見かけほどは仲が良くない。いやむしろ金だけが三人をつなげているといっても過言ではない。こっちが少し動いて、あの夫婦をお互いに疑心暗鬼にさせれば、いくらでもチャンスは巡ってくる。そのためにさっき刑事に双葉の不倫を匂わせてんだろう」

「そうだけど、うまくいくの」

「ああ、絶対うまくいく。だって誰も私たちの本当の目的は、想像すらできないだろうからね」

「わかったわ。これから新しいマンション手配して来るわ」

 山村社長は夕月の家から出て行った。

投稿者

ほたる

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