「立石さん!」
立石和行は不意に後ろから呼び止められて、振り返るとそこには夕月光希の事務所のマネージャーの神谷祐介が立っていた。
「あなたは夕月さんのマネージャーの神谷さんじゃないですか。事件以来ですね。夕月さんはもうすぐ映画で復帰されるみたいですね。あなたもまた忙しくなりますね」
「立石さんは事務所を辞められたと聞いたのですが……」
「ええまあ。和葉姉さんは亡くなったので……」
「あの事件のことで、立石さんにお話したいことがあるのです。誰にも聞かれたくない話なので、立石さんの自宅近くでお帰りになるのを待っていました。あの事件以来どうしても気になって頭を離れないことがあるのです。夕月さんや社長には話せません。できでば双葉さんにも黙っていて欲しいことなのです」
「気になることって……」
「ここでは話せません。できれば日を改めて二人きりの場所で、都合のいい日を指定していただければありがたいのですが」
「ずいぶん深刻そうだね。私の方は現在失業中だから、時間はたっぷりありますよ。君の方が忙しいだろう。
君の都合に合わすよ。実は私もあの事件には腑に落ちないことがあるんだ。君の知っていることを是非教えて欲しい」
「ではこの場所に明日の午後三時頃はいかがですか」
神谷祐介は一枚の紙を出した。その紙には場所の住所が書かれていた。
「わかった必ず行くよ」