殺され遺棄された男性は行方不明者などのデーターで照合もした。男性の写真を持って徐々に聞き込み範囲を広げ、男性の情報を捜したが、一切手掛かりが見つからなかった。ついに捜索範囲を全国に広げていった。それでも何の情報も得られなかった。時間だけが経っていった。
殺害場所を捜索していた刑事たちも、手掛かりがなくどこで殺されたのかの検討すらつかなかった。それというのも、その死体は拷問あとは多く見られたが、その男性の体液や血液以外には何の付着物も着いていなかった。埃ひとつ見つからなかった。もちろんその死体を入れていた黒いビニールからも何も見つからなかった。
その死体の不気味さは刑事たちに恐怖さえ感じさせるもだった。そして刑事たちは内心、事件の解決は不可能なのではないかとあきらめ始めるようになった。しかし連日住民たちから事件の解決を求める声が止まず、唯々毎日走り回っていた。
そんな時、捜査本部に匿名のタレコミがあった。内容は男性を殺したのはその男性の妻だというものだった。しかし、そのタレコミの主は自分の名前も言わなければ、その男性の身元も言わなかったが、先日殺された女優の関係者だとだけ言って電話が切れた。
捜査本部の刑事はタレコミの主の声から愉快犯だろうと考えた。殺された女優とは夕月和葉のことだろう。どちらの事件も大きく報道されて注目を集めている。それにタレコミの主は声を変えているが、面白そうに笑いながら電話していた。もちろん公衆電話からだった。
しかし何の手掛かりもない今、このタレコミを無視することはできなかった。すぐに情報の確認をすることになった。一つの班は夕月和葉の関係者にあたり、それと同時にタレコミの主を捜す手配も行った。公衆電話の近くの防犯カメラに一人の人物が写っていた。時間的にも間違いはないだろう。ただ不思議なことに防犯カメラに写っていたのは、小学生くらいの子共だった。
やはり警察である。その子供の身元はすぐにわかった。公衆電話の近くに住む小学校5年生の男の子だった。すぐに刑事がその子の家に事情聴取に向かった。