二人の刑事はタレコミの主の少年の家の前に来た。呼び鈴を鳴らすと、三十代半ばくらいの女性が出てきた。刑事たちはその女性に警察手帳を見せて少年と話がしたいというと、その女性は笑みを浮かべて、刑事たちを家の中に案内した。刑事たちはその様子を不審に思いながらも後について家の中に入って行った。
家の奥の応接室に刑事たちは通された。その後女性は少年を呼びに行くと応接室を出て行った。広い部屋で豪華な調度品が備え付けられていた。少しすると白いエプロンを付けた、さっきの女性より若い女性がコーヒーとクッキーを持って入って来た。
それらを置いて部屋を出ようとしていたので、一人の刑事が声をかけ、ここの家庭の家族構成やどのような人物たちなのかと尋ねた。するとその女性は自分はメイドでさっきこの応接室に案内したのがここの奥様で少年の母親、そしてご主人様は有名企業の経営者で、かなり裕福な家庭のようだ。
そんな話を聞いていると、少年が入って来た。メイドは慌てて部屋を出て行った。
「思ったよりも早いのですね。僕はもう少し後で来るのかと思っていました。でも警察手帳まで用意しているなんて、かなり手が込んでいますよね。つまりこれが僕の最終審査ですか」
少年はソファーに座るなり、訳の分からない話をしたので、二人の刑事は顔を見合わせて、しばらく戸惑っていた。
「もしかしてこれも審査の一つですか。すみません。もう一度やり直させてください……」
そう言うと少年は一瞬、顔を下げてすぐに顔を上げて、片方の口角を上げてニヤリと嫌味な表情を作って話し始めた。
「よくここがわかったね。あの電話をしたのは僕だ。僕は見たのさ犯人を。あの男の妻をね。でも君たちはあの男が誰かもわかっていない。だから妻が誰かも見当がついていないんだろう。じゃあ僕がヒントを出そう。あの男は有名女優の元マネージャーで、妻は女優の妹だよ。ここまで言えば察しはつくだろう。わかったら早く帰って犯人を捕まえることだ」
刑事たちは少年が話している姿を唖然として見ていた。まるで芝居のセリフを話しているように感じていた。そしてその話を聞き終わった刑事たちは、しばらく考え込んでいた。