「君はいったい何を言っているのかね。きみの言動はとてもまともとは思えない。君は警察を愚弄するつもりなのか。これ以上そのような態度を続けると、署の方に連行するしかないが、私たちは子どもだからと言って、容赦はしないよ。これは殺人事件の捜査なのだからね。そのことをよく踏まえて答えなさい」
刑事たちは鋭い目つきで少年を睨み見つけた。少年は刑事たちのその態度に驚きおののくように、目を見開き震えながら小さくつぶやいた。
「本物の刑事さん達ですか……、なぜ……」
「本物に決まっているだろう。君が警察に電話して来たのだから、何をそんなに驚いている。私たちは君の電話での情報提供の件を詳しく聞きに来ただけだよ。なぜと聞きたいのはこっちの方だ。何もかも正直に話してくれればそれでいいんだ」
刑事たちは少し表情を和らげて、最後は優しく言って聞かせるように話した。
「さ、殺人事件のことなんか何も知らない。本当に人が殺されたなんて、僕は何も知らない、知らない……」
そう言って少年は泣き出した。二人の刑事は顔を見合わせて困惑の表情を浮かべていると、そこに少年の母親が入って来て、泣いている少年を見て、すぐに近づいて刑事たちに問いかけた。
「どうしてこの子が泣いているのですか。この子はオーデションには不合格ということですか。事務所の人からはほぼこの子で決まりと聞いていました。これが最終確認のテストだと、皆さんはこの子の演技力を高く評価していると、言っていたじゃないですか。この子以上の子はいないと」
「すみません、お母さんあなた達親子が何を言っているのか全く分かりません。話がかみ合わないのです。きっちり順序だてて話していただけませんか」
「あなたたちはOプロダクションの俳優さん、もしくはスタッフの方々でしょう。訳が分からないのはこちらの方です。しっかりとした説明を求めます。どういうことなのですか」
「わかりました。先にこちらの方からお母さんと息子さんの方に、事件の経緯や今日来た目的と私たちが知りたいことを説明します。その後でお二人から改めて事情を聴取したいと思います。ちなみに私たちは正真正銘本物の刑事です」
二人の刑事はそう言って、改めて警察手帳を母親に見せた。