土曜日の朝、石川千賀子が高岡家に着いて、チャイムを鳴らすと中からメイドの松波が出てきて、杏介の部屋に案内しました。部屋に入ると壁にはぐるりと本棚が置かれていて、多くの本が並んでいました。そして部屋の真ん中に4人掛けほどの丸いテーブルがありました。千賀子はその本の多さに驚いていると、部屋にメイドの松波がコーヒーを持ってきました。そして松波がドアを出た後、杏介は本棚からツルゲーネフの『初恋』を取り出しました。それをテーブルに置いて座りました。千賀子も座りカバンから『初恋』の本を取り出しました。

「やはり、ツルゲーネフといえば『初恋』ですね。高岡先生はこの本をどう思いますか。私も3回読みましたが、何を論点にすればいいのかわからなくて・・・・。」

「難しいですが、『初恋』はツルゲーネフの自伝的作品というのは一般的ですよ。だったら父親との関係を中心に展開していくのが、書きやすいのではないですか。」

「はい、そうですね。じゃあ今から構成考えていきますね。ありがとうございます。やはり高岡先生に相談してよかったです。」

千賀子はにっこりとそう言ったので、杏介は笑いながら頷きました。

「いえいえ、そんな、僕も今から作家としての仕事、少ししますね。」

そして、二人は静かにそれぞれの仕事をしていました。2時間ほど経つと千賀子は杏介にノートを渡しながら話しかけました。

「あの、こんな感じで展開してみようかと思いますが、どうでしょうか。」

「ああ、いいんじゃないですか。この構成で、それにもうお昼ですね。お食事にしましょう。さあ食堂に行きましょう。もう用意はできてるはずだからね。」

「ええ、私もごちそうになってもいいのでしょうか。」

「もちろんですよ。さあ行きましょう。」

二人は食堂に向かっていきました。

投稿者

ほたる

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