食堂に入ると杏介の両親がすでにテーブルの前に座っていました。両親が自宅に居たことを知らなかった千賀子は慌てて挨拶をしました。両親も立ち上がって挨拶を受けて、千賀子をテーブルに促しました。千賀子と杏介も並んでテーブルの前に座りました。松波と山内の二人のメイドはそれぞれの前に料理を運んで来ました。食事の途中で杏介の母親の鈴代は千賀子に話しかけました。

「千賀子さんはお若いのに講師だなんて、優秀なんですね。しかもこんなにお美しい方が大学の先生なんてね。それに杏介さんが女性を連れて来るなんて、何年ぶりかしら。」

「お母様違いますよ。千賀子さんは仕事で来られただけですよ。変なこと言わないでくださいね。失礼じゃないですか。」

「わたくしなどそんな、高岡先生にはご迷惑ですわ。」

手を振りながら真っ赤になって下を向いた千賀子を見て、杏介はかわいいと思いました。

「とんでもない。うちの杏介はいつまでもフラフラしていてね。困ったものだよ。千賀子さんのようなきれいで、しっかりした人が息子の嫁になってくれたら、何も言うことはないのですよ。千賀子さん一度真剣に考えてもらえないですか。」

「お父様、やめてください。千賀子さんが困っているじゃないですか。」

「ダメかな。」

そんな話をしながら食事は終わり、二人は杏介の部屋に戻り、仕事の続きを始めました。また3時間程して千賀子は杏介や両親に丁寧にお礼を言って帰っていきました。杏介は久しぶりに楽しいひとときを過ごせたと思いました。

投稿者

ほたる

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