杏介は自分の研究室に入って、講義の用意を始めました。講義に行き,そしていつものように講義を行いました。現在杏介が講義しているのは、日本文学でその中でも、今は堀辰雄の『風立ちぬ』でした。この物語は当時不治の病の結核に侵された、節子とその婚約者の主人公とのサナトリウムでの生活を描いたものです。これが講義の内容なため杏介は、その話に感情が移入していくのは当然かもしれません。そんな講義が終わって、研究室に戻りコーヒーを飲みながら、しばらく休憩してからパソコンを開き、書きかけの推理小説を書きました。彼が今書いているのは銀行を舞台にした、金融庁や金融機関全般を巻き込んだ、長編の小説なので膨大な資料を読み込み、本格的社会派ミステリーにしたいので、ながい時間を要してました。杏介にとってはこの著書が自分の代表作になると思っていました。

 小説を書いているとドアがノックされて、入ってきたのは石川千賀子でした。彼女は、杏介に1枚のチケットを手渡しました。杏介は何かと思い彼女の顔を見上げると、彼女は小さな声で恥ずかしそうに言いました。

「あの先日のお礼と言っては何ですが、ディナーショーというか・・・・・、夕食を食べながら、クラッシックの音楽を聴くというものなのですが、先生はクラッシックはお嫌いでなかったら、一緒に行っていただけませんか。」

「クラッシックですか。好きですよ。あまり詳しくないので聞くことしかできませんが、それでよければ、ありがたくご一緒させていただきます。」

「うれしいですわ。では今度の土曜日の夕方によろしくお願いします。高岡先生、それでは失礼します。」

そう言うと千賀子は研究室を出ていきました。

投稿者

ほたる

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