杏介が大学での講義が終わって、自分の研究室でくつろいでいた時、スマートフォンが鳴り出ると教授からで、教授室へ来るようにとのことでした。文学部の教授は川崎康雄という49歳、大学教授にしてはスラッとした長身で朝黒いスポーツマンタイプのイケメンです。5年前に妻を交通事故で亡くしたため、現在は高級マンションで一人暮らしをしています。しかも若くして教授になるほどのやり手なため、女性職員だけでなく女生徒からも人気が高い。

 教授室に入ると川崎教授と千賀子講師が一緒にソファーに座っていました。

「忙しいところ呼び出して申し訳ないね。大事な相談があるので時間をいただきたい。」

「いえいえ大丈夫ですが、相談とは何でしょう。」

「先日石川君から聞いているだろうが、今度の学会で石川君がツルゲーネフについての論文を発表する予定だ。君にも助けってもらっているようでお礼を言います。それとお願いついでに石川君と一緒に研究会当日にも参加してもらえないかな。来週の土曜日から水曜日までホテルは確保しています。是非お願いします。」

「私でお役に立てるようでしたらお供させていただきます。」

「ありがとうございます。杏介さんが一緒に行っていただけるだけで、心強いですわ。」

千賀子はそう言って微笑みました。

「高岡先生、石川先生私も今回は参加しますので、よろしくお願いしますね。」

「それではこれで失礼します。」

 杏介は教授室を出て自分の研究室に戻って、帰る用意をしているとスマートフォンが鳴りました。今度は珠代でした。

「もしもし珠代ですが、お仕事は終わりましたか。少しお話が合って、お会いできないでしょうか。もしよければ知り合いのレストランで食事でもしながらお話しできないですか。それに先生にご紹介したい方がいるのですが・・・・・。」

「いいですよ。じゃあ僕は今から用意して、先生の研究室に行きます。待ててくださいね。」

投稿者

ほたる

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