刑事からの事情聴取がひと通り終わり、とりあえず自分の部屋にそれぞれ戻るようにと言われ、ホテルから出るときは必ず、刑事の許可を得るようにと言われました。そのため杏介は部屋に戻って、シャワーを浴びました。シャワーを浴びながらふっと思い出しました。刑事が後で盛男や珠代にも状況を聞くと言っていたこと、盛男はいいとして、珠代がこのホテルに来てることが、わかるとまずいのじゃないかと思い始めました。

 とにかく盛男の部屋に電話して相談しなければと急いでシャワーを出て、服を着て電話しました。珠代はまだ寝ているようでしたが、盛男に状況を説明しました。すると盛男は言いました。

「あの高岡先生申し訳ありませんが、昨夜は私と二人だけでいたことにしていただけませんか。珠代は今すぐ起こして帰らせますので、昨夜はあっていないということにしていただけませんか。珠代は大学に病欠してることになっているので、ここにいることが大学に知れるとまずいんです。お願いします。」

「ええ、でも警察にはバレたら疑われますよ。」

「わかってますよ。でもお願いします。珠代のことは黙っててください。何かあったら責任は私がとりますので。」

「わかりました。でも石川先生は誰に襲われたのでしょうね。」

「そうですね。それで石川先生の容態はどうなんですか。またどんな風に襲われたのですか。その時川崎教授はどうされていたのですか。」

「命には別条ないって聞いたのですが、詳しいことは教えてくれなくて、わからないです。あの川崎教授を疑っているのですか。」

「特にそう言うわけではないですが、この前珠代が言っていた日本文学専攻の教授が、なぜ海外文学の研究会に論文などを提出したりしたのかが気になるので・・・・。」

そのような話をして電話を切ると、すぐにまたホテルの電話がなりました。今度は川崎教授からでした。

「高岡先生、今少しお時間ありますか。もしよろしければ少しお話ししたいことがあるので、お部屋にお伺いしてもよろしいですか。」

「はい、来ていただいて結構ですよ。」

投稿者

ほたる

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