刑事が盛男に対して詰め寄っているのを見て、杏介の父義隆は口をはさみました。

「それなら刑事さんが調べた内容を私達に話していただけませんか。私達は刑事さんに協力しているのですから、聞かせていただく権利はあると思います。」

それを聞いた2人の刑事は互いに顔を見合わせて、しばらく黙っていました。しかし5人はそれを聞くまで何もしゃべらないとでも言うように、刑事を見ていました。刑事達は仕方ないと思ったように軽く頷き中島刑事が話し始めました。

「まずは進藤さんが話された5年前の中村茂さんの自殺の件ですが、確かに石川先生との交際はあったと思われます。自殺に関しても不審な点はありましたが、捜査の結果一番あやしいと言われている石川先生にはアリバイがありましたし、結局自殺だろうと言うことになってます。」

それを聞いて杏介はもっと詳しく話してほしいと言いました。

「5年前不動産会社の経営者の息子である中村茂さんが亡くなりました。夜中に不動産会社の屋上から飛び降りていたのを、新聞配達員が見つけて通報しています。最初は自殺・事故・殺人の全ての可能性で捜査をしたのです。しかも彼の両親は彼が持っていたお額の資産が無くなっていたので、石川先生が真っ先に疑われましたが、先生は当時まだ大学生で同じ大学の友人女性5人で、北海道に3泊4日で旅行中の2日目でした。友人たちは皆彼女と一緒だったと話しています。」

刑事の話を聞いた杏介の父親のは言いました。

「なるほど、完璧なアリバイということですね。それなら無くなった多額の資産のことはどうなったのですか。」

「そのことについてもすぐには見つからなかったのです。だから彼の両親や親類は彼女の疑いを払拭しきれず、何度も何度も警察に捜査を依頼に来ました。しかし捜査が進むうちにそのお金の行方も分かりました。中村茂さんが慈善事業に寄付されています。それで自殺で捜査は終わりました。」

「お金のことも分かったのですか。じゃあ彼女は本当に中村茂さんの死に関係なかったのですね。それに多額の資産も彼女には入っていないのですね。」

そう言ったのは杏介でした。

投稿者

ほたる

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