古川刑事はなお一層話を続けました。

「進藤弁護士あなたがこの5年間石川先生に対する調査を行ってきたようですが、あなたが調査されたことは、あまり信憑性がないように感じます。しかも今回、妹さんまでホテルに同行しています。このことについては私達としてはやりすぎではないかと感じています。その件についてもう少し詳しくお聞きしたいのです。」

「わかりました。詳しくお話しいたします。ただ妹がホテルについてきたことは、僕が連れてきたのではなく、珠代が勝手に来たものです。」

 盛男の話は中村茂の話から始まりました。5年前不動産会社の経営者の御曹司の彼は知人の紹介で石川千賀子と知り合い、その後すぐ交際が始まり婚約に至りました。そのように中村茂さんの両親や近隣は話していました。しかし石川先生のまわりの方々は二人の交際は知られていませんでした。

大学の友人も石川先生に交際相手がいたことを、聞いたことも感じたこともなかったそうです。つまり徹底的に交際相手を隠していたのです。不倫相手か何かならそれもあり得ますが、中村家は正式に婚約していたということなので、なぜ隠す必要があったのかということです。

それに中村茂さんには自殺する理由は見当たらないと、両親も友人もそう言っています。それどころか石川先生との交際は順調で、その上仕事でも結婚と同時に会社の社長に就任して、父親のあとを継ぐことになっていたので、彼は友人に幸せだと話していました。

彼は投身自殺ということになっていますが、亡くなる少し前まで父親と今後の仕事の方針を話し合っていました。しかもその時に彼は彼女との結婚式を盛大に行いたいと、式場も手配してほしいと言っていたとのことでした。そんなことって考えられないと調査を彼の両親が依頼しました。

そこから調査が始まりましたが、彼だ死んだ時、多額の資産を持っていたはずのものが、全てが 無くなっていたのです。しかもの資産がどこに行ったのか全く分からなかったのです。

 3年前には30歳のエリート銀行員の竹田という男性が、夜お酒に酔って港の埠頭から落ちて死にました。彼も石川先生と交際していたと、彼の両親も銀行の同僚も話していました。しかしやはり石川先生のまわりからは、竹田さんと交際していたということを知っている人はいなかったのです。

この時も彼は3000万円程の貯蓄がありましたが、亡くなった時はほとんど無くなっていたのです。

 2年前に38歳の塾の経営者の吉岡という男性が、服毒自殺をしています。彼もまた石川先生と交際をしていました。しかしそれまでと同様に彼女は交際を隠していました。その上彼もまた1億近い資産を持っていましたが、亡くなった時には資産も無くなっていました。

 

投稿者

ほたる

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