一か月後石川千賀子は大学に復帰することになりました。石川先生と川崎教授は二人で杏介の研究室にやってきました。事件はまだ進展が見られないままであります。そのため、川崎教授は事件の日、ホテルにいた三人でいろいろ話し合いたいとの要望でありました。
「高岡先生この度は私のことでいろいろご迷惑や、ご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。」
「石川先生ご迷惑だなんて、そんなことよりもう大丈夫なんですか。無理しないでくださいね。」
杏介は千賀子にそう言いました。そして二人にお茶を入れるとテーブルを囲んで座り、事件の状況を三人で話しました。千賀子は突然後ろから襲われたので犯人は見ていないとのことでした。しかも駐車場には川崎先生からの伝言と言われて出かけたそうです。
「もちろん僕はそんな伝言は出していないし、そんな犯人にも心当たりはありませんよ。あのそれから高岡先生にお聞きしたいことがあるのですが、進藤先生もあの事件があった時、ホテルに来ていたと刑事から聞いています。それに高岡先生に会いに来たようだとも聞いていますが、失礼ですがその点についてもお聞きしたいのですが・・・。」
「いやあの、進藤先生のお兄さんが弁護士さんなんですが、いろいろ僕に話があるそうなのです。それで一緒に同じホテルに泊まっていたのですが、進藤先生着いてきたみたいなんです。なんにでも好奇心旺盛な方なので、ただ大学の方にはホテルに来たことを内緒にしていたので・・・。」
「僕達は別にそんなことを大学に告げ口しませんよ。」
川崎教授は笑いながらそう言いましたが、千賀子はあきらかに不快そうな表情になり、杏介に向かってこう言いました。
「わたくしのことを根掘り葉掘り調べてらっしゃるのでしょう。ご兄妹揃って根も葉もない悪意の噂を信じているようですね。杏介先生や川崎教授にもいろいろ話されているみたいなので、今日はそのことについてわたくしの話も聞いていただきたく、こうして来させていただきました。」
「石川先生、まあまあ落ち着いてゆっくりお話聞きますので、杏介君も聞いてくれますよね。」
「ええもちろんです。僕達に誤解があったなら謝ります。」
千賀子は深呼吸をすると落ち着いたようでした。