千賀子はゆっくりと話し始めました。
「確かに私は亡くなられた男性の方々とは知り合いでした。しかし進藤先生たちが考えるほどの深い関係ではありません。確かに恋愛感情はお互いに持っていたことは否定しませんが、わたくしの両親にもまだ紹介していませんでしたし、その前に友人達に紹介するのは筋が違うと思っていたので話していませんでした。」
「そうですか。でも男性の方々が亡くなられたときに、石川先生が知り合いであることを否定されたと聞いたのですが、間違いだったのでしょうか。」
「わたくしの両親はとても厳格で、紹介していない男性との交際をしていたことは話せなかったのです。それが多くの誤解を生んだのかもしれませんが、だからと言ってわたくしがあの方々の死に何か関わりのあるかのように言われるのはあんまりです。」
千賀子はハンカチで涙をぬぐいながらそう言いました。
「高岡先生はわたくしのことを多くの男性と関係を持った恋多き女だと思われているようですね。まあ事実なので仕方ないのですが、私が愛した人たちがみんな正式なお付き合いをする前に亡くなられました。みんなわたくしにはもったいないよくできた方々でした。だから自分が持っている資産も自分の必要な資産以外は慈善事業に寄付されたのですよ。」
「それじゃあ石川先生は亡くなられた男性が、慈善事業に寄付されていたことを知られていたのですか。」
杏介は驚いたように千賀子に聞き返しました。
「もちろんですわ。そのようなことも私達は話していましたので知っておりました。でもわたくしに関わった方々が次々亡くなっていくのは、とても悲しくてつらいです。高岡先生がわたくしから距離をおくのもわかりますわ。不吉な女ですものね・・・。」
「そんなことはありませんよ。」
「まあまあ、今日は事件の話はこのくらいにしましょう。今日はもう一つ大切な話があります。それはこれからこの大学が転換期に入っていくので、私達文学部の改革についての今後を話し合いたいのです。それに文学部長に来年度、僕は就任することになりました。つきましてはお二人にもいろいろご協力いただきたいのです。そのお話もしたいのです。」
「おめでとうございます。」
二人はそう言いました。