今から8年ほど前から少子化の影響で大学の経営は少しずつ悪化していきました。前学長は学部の学科を細分化して、より学生の専門性を高めようとしていたのですが、それが一層経営を悪化していきました。そのため川崎教授もお金のために奔走するようになったようです。
二度目の奥様の実家の父親からも援助してもらっていたようだが、失脚してからは援助も途切れて、川崎教授はより一層お金の工面に大変だったみたいで、自宅へ帰る時間もなく働いていたみたいです。そのため奥様との仲は冷え切っていきました。奥様は父親のこともあり、夫のことにも不安が募り、心を病んでいきました。
そして5年前奥様の父親が自殺して、その自殺の第一発見者になったのも娘の奥様でした。ショックが大きく、その場で倒れ父親のあとを追うように亡くなったみたいです。川崎教授はとても悲しんでいたようです。しかし大学の経営状況も悪いため、泣いている暇はなく、だただた働かなくてはならなかったようです。
祖母や父親の苦労していることを知った石川先生は、いろいろお金のことを考え始めたみたいです。ただ石川先生が川崎教授に強要されたわけではなく、自主的に川崎教授が理事している慈善事業に寄付するように誘導していたみたいですよ。たぶん父が苦労しているのを見るのが辛かったのだろう。
石川先生がはじめからお金だけが目当てで近づいたかどうかはわかりませんが、結果的には石川先生に近づいた男性達が不審な死を遂げたことは事実で、彼女と出会わなければ彼らはあんな亡くなり方をしなかったでしょう。しかし彼らの死に石川先生は関係なかったのです。彼らが死ぬことも知らなかったんです。
つまり石川先生の祖母が独断で男性達を殺していったということです。そのように手紙に書いてあったので、杏介は刑事に質問しました。
「なぜ石川先生の祖母が交際していた男性を殺さなければいけないのですか。しかも三人もそんな恐ろしいことをしたのですか。」
「それは学長が川崎教授と石川先生の様子がおかしかったので、二人の素行を調べていたので、中村さんが石川先生のことを探偵を雇って調べて、川崎教授との仲を疑って、二人を詐欺罪で告訴しようとしていたのを知って、初めは親子だからと説明しに行ったのだけど、信じてもらえず言い争っていてはずみで、屋上から突き落としてしまったみたいです。」
古川刑事が話しました。そのあと中島刑事が話を続けました。
「たぶん中村さんを殺してしまったことで学長の何かが壊れてしまったのでしょう。その後も竹田さんや吉岡さんも中村さんと同様の疑問を持って、川崎教授と石川先生の素行を調査して、そこに気づいた学長が事故や自殺に見せかけて殺したようです。たぶん二人が大学の経営のために無理しているため、自分が助けてやらねばと思ったみたいです。」
その言葉に盛男は質問しました。
「なぜ学長は男性達が川崎教授と石川先生の素行を相手の男性達が調べていることに気づいたのですか。」
「それは素行調査のためには、まず大学内を調べに来るでしょう。だからそれを学長が二人より先に知ることができたんだそうだ。」
中島刑事はそう言いました。