千賀子が出て行った後、川崎教授はまた話し始めました。

「高岡先生や進藤先生、それに大学の生徒さんには本当にご迷惑をおかけしました。そんなつもりはなかったのですが、こんな結果になって、本当になって言っていいのか・・・。せめて私のできるだけのことは、していきたかったのですが、こんな中途半端な形で大学を去ることになってしまいました。」

それを聞いて珠代が質問をしました。

「高岡先生は事件があった、研究会のホテルに大学に内緒で、行っていたことを大学に言いましたよね。それに私が石川先生のことを調べている、弁護士の妹と知って邪魔になっていましたよね。私は確認したいんですが、経済学部長に私を大学から追い出すように、圧力をかけたりしていませんよね。川崎教授が大学を追われるまで、教授から手を回していると思っていました。」

川崎教授はフッと笑ってから話しました。

「私は進藤先生がホテルに来ていたことは、大学には話していませんよ。それに学部長に手を回したりしませんよ。あの方とは仲良くないので、表向きには穏やかで寛大な方に見えますが、大学の学長に私がなることについては、絶対に許せないと思っていたみたいですよ。だから本来はもっと冷静に考えれば、あの大学の内情はすぐわかったはずです。」

「すみませんおっしゃる意味が解らないのですが・・・。」

「私も後で知ったのだけど、学長が学部長に私に内緒で、私の素行を調べて欲しいって持ち掛けたらしい。その時私との結婚を考えているみたいなことも添えてね。つまり私の素行に問題がなければ、大学の実質的な最高権力者は私になるので、学部長の嫉妬心に一気に火をつき、私の足を引っ張ることに必死になったようです。」

「川崎教授は知らなかったのですか。」

珠代は聞きました。

「学長がそんなことを考えていたとわかったのは、私と千賀子が高岡先生の研究室に来年度から准教授になってほしいと話しに行きましたよね。その時はまだ本気で、大学を立て直したいと思っていました。しかしそのあと学長に呼ばれて、学長と私の婚姻届けを出すというんです。それを聞いた時です。学長の考えを聞いたのは。」

珠代は続けて質問しました。

「川崎教授は学長が石川先生の交際していた、男性を殺していたことは知らなかったのですか。」

その質問に川崎教授はしばらく黙っていました。しかもとても辛そうに下を向いていましたが、フ~と息を吐くと顔を上げて、決心したように口を開きました。

「亡くなった彼らのタイミングが不思議だった。千賀子の素行の調査が学校に及んだ後だったので・・・。でも偶然だと思いたかった、学長の告白の手紙を読むまでは。話は戻りますが。学長は私と結婚することで、保険金の受け取りを私に変えました。また資産を現金にして私達に譲りました。」

投稿者

ほたる

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