由美子の母は朝早くから、忙しく身支度をしていた。由美子ももちろん早くから起きて、今は朝食を食べているところで、今日は由美子の学校の入学式。母はさっきから髪をセットして、化粧も念入りにして、一番のお気に入りのスーツを着て、自分の姿を大きな鏡に映して確認していた。
「由美子さん用意は整っているの。入学式なんだから忘れ物とかしないようにいなさい。」
「わかっていますよ。小さい子じゃないのだから。」
「そうだったらいいのよ。」
由美子は朝食を終えて、身支度をしてカバンを持って、玄関に行こうとしたが、まだ母は鏡の前から離れようとしない。由美子は腕時計を見て、母親を急かさないとと思った。
「お母様、急がないと遅刻しますよ。」
「わかったわ。これでいいかしら。」
「お母様の入学式ではないのですよ。そんなにおめかししても仕方ないですよ。」
「はいはい。行きましょう。」
二人は学校に着き、門を入ったところに、多くの人盛りができていました。由美子は母が先日言っていた、アイドルの子が着ているのだろうと思った。由美子にとってはそんなことには、全く興味がなかったが、母はそのアイドルを一目見ようと、その人盛りの中に行こうとするのを、由美子は止めた。
「お母様、手続きはあちらですわ。早く済ましましょう。今は空いているから、混んでくると時間がかかるから面倒になって来るわ。」
「でもせっかくアイドルに会えるかもしれないのに、そんなに急がなくてもいいわよ。」
グズグズ言っている母の腕を引っ張って受付を済ませに行き、その後母はまた人盛りの方へと向かっていくので、仕方なく由美子もついていった。するとあまりの人に警備の人が出てきて、早く受付を済ませてと注意をすると、少しずつ人盛りは崩れて、受付の方に人が流れていった。
人ごみの中心にいた人物の姿も、明らかになった。