響輝はゆっくりと由美子たちの方にやって来た。
「麗奈さんまた同じクラスになりましたね。よろしくお願いします。お隣のお嬢さんを紹介してください。僕は松田響輝と言います。どうぞ末永く仲良くしてくださいね。」
響輝はそう言うと、由美子に右手を出して握手を求めた。由美子はしばらく呆然としていたが、隣の麗奈に肩を叩かれ、慌てて右手を出して握手をした。響輝の手は柔らかくて暖かかった。由美子は自分の手が、節だって少し荒れているのが、とても恥ずかしく感じていた。由美子は下を向いたまま黙っていた。
「あの、お名前教えていただけませんか。」
「あっ、神城由美子です。失礼しました。」
「ありがとうございます。これからも仲良くしてください。」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」
その時教室のドアが開き、担任の教師が入って来た。担任は背の高い、ガッチリとした体格のスポーツマンタイプの30歳過ぎの男性で、朝黒い肌に、少し太めの眉、高い鼻、白い歯がとてもさわやかな青年でした。担任は自己紹介をすると、何枚かの書類をみんなに配って、これからの予定などを説明した。
そして説明が終わると、担任は順番に自己紹介をするように促した。そして順番に自己紹介を行った。彼らはみんな裕福な家庭の御曹司と、御令嬢たちばかりだが、自己紹介をしているのを聞いていると、みんな気さくでユーモアのある、個性的な生徒たちばかりだった。
自己紹介が終わると、担任は何か質問はないかと聞き、特になかったので、そのまま解散になった。クラスメイトはそれぞれ保護者のもとに行って、帰っていった。もちろん由美子と母親も帰っていった。帰り道由美子の母は、松田響輝と由美子が同じクラスになったので、とても機嫌がよかった。
「由美子さん松田響輝とはお話ししましたか。素敵な方だったでしょう。」
「……」
「由美子どうなの。無視しないでよ。」
「お母様、クラスメイトですから、ご挨拶はしましたよ。」
「もし機会があったら、一度うちにもお招きしたいわ。無理かしら。」
「無理です。」