放課後、ミステリー同好会の部室に川崎麗奈に連れられて、由美子は入って行った。この学校は図書館が、5階建てのビルになっていて、そのビルの5階には、応接室のような15人ほど収容できる小会議室が3つと、50~60人収容できる大会議室が3つあった。
由美子は図書館の3階までしか入ったことがなかったので、5階にこんなに部屋があるとは、思ってもいなかった。(きっとこの中の小会議室がミステリー同好会の部室なのだろう)由美子はそう思いながら、キョロキョロ見渡していた。すると川崎麗奈は大会議室に入っていった。
「由美子さんここが、ミステリー同好会の部室なのよ。結構居心地のいい部屋なのよ。部員は部活以外でも自由に、使っていいのよ。だからここで勉強もできるは、もちろんパソコンやテレビやビデオもあるし、食事もできるわ。それにパーテーションの向こうには、キッチンもあるし、飲み物も自由に飲み放題よ。」
その会議室は6人くらいがグループで作業できるように、丸テーブルに座り心地の良さそうなゆったりとした椅子が、6個置かれていた。そのテーブルと椅子が12セット置かれていた。しかも正面は舞台のようになっていて、マイクや照明器具まであった。雰囲気的には飾り付け次第で、小さな結婚パーティーや講演会もできそうな感じだった。
「麗奈さん、こんな大きな会議室みたいなところが、ミステリー同好会の部室なの。」
「ええ、そうよ。」
「こんなに立派な会議室なの。なんだか緊張するわ。」
「そう。こんなものじゃないの。」
「ねえ今日は何人くらい来るのかしら。」
「詳しくはわからないけど、一応目標は50人に部員を増やしたいらしいのよ。だから先輩たち頑張っているのだって言っていたわ。」
「そんなに来るのですか。」
「来てくれたらうれしいのだけど、まあこの設備を自由に使えるとなったら、来てくれる人もいると思うわ。」
由美子と川崎麗奈が話しているところに、何人かの人達が入って来た。その中に松田響輝もいた。由美子は松田響輝と視線が一瞬合って、思わず俯いてしまった。そしてじっと自分のスカートを見ていました。すると松田響輝が由美子の隣に座った。そして彼は静かに小さな薄い箱を、由美子に差し出した。
由美子はその箱をしばらく受け取らずに見ていました。すると彼は由美子の膝の上に、その小さな箱を置いた。由美子はその箱を手に取って、松田響輝の方を見ました。彼はにっこり微笑んで、小さな声で囁きました。
「この前はありがとうございます。君のハンカチを台無しにしてしまって、申し訳ありませんでした。お詫びに新しいハンカチを代わりにお返しします。後で見てください。気に入ってもらえるといいのですが……」
由美子は軽く頷きながら、小さな声で答えた。
「ありがとうございます。でも申し訳ないですね。わざわざ新しいハンカチを買ってきてくれたのですか。」
響輝は小さく微笑んで頷いた。その時、ミステリー同好会の部長が前に出て、マイクを持って話し始めました。