2年生の4人は順番に名刺を由美子に、差し出して丁寧に頭を下げた。由美子は驚きましたが、その4人の名刺をゆっくりと確認していた。1人目は大学生のアルバイトを雇って、家庭教師の派遣事業を行い、2人目は海外から小物などを仕入れて、ネット販売をしていた。3人目はオンラインで英会話スクールを開業していた。4人目の由美子に話しかけた先輩は、ミステリー小説で新人賞をとって、作家の卵でカルチャースクールで文章の講義を行っていた。

 由美子は4人が小さな事業ではなく、もうすでに大きく展開されていた。しかも4人ともやり手の実業家であることも、由美子は直感的に感じていた。

「あの先輩たちはいったい、どうやってこんな事業を起業できたのですか。やはり、皆さんには大きなコネや後ろ盾があるのですね。私の家庭は皆さんと違って、裕福ではないので、とてもこんな事業をすることはできません。」

由美子の言葉に4人の先輩は、少し不快な表情を浮かべたが、すぐに笑顔になって4人とも顔を見合わせ、クスクス笑い始めた。

「確かに僕たちの家庭は経済的には豊かな方だろうが、だからと言って親のツテや、資金で事業を展開しているわけではないです。自分で一から考えて、最初は自分の貯金で小さく始めて、少しずつ顧客を増やして、大きくしてきたんだ。」

「そうですか。それは失礼なことを言いました。お許しください。でもやっぱり私と皆さんは違いますね。私はそんな会社を起業できません。」

「何を言っているのですか。僕たちも最初はほとんど手探りで、失敗も何度もしたが、少ない資金ではじめ、できるだけお金をかけないように、経営していけば何とかなるよ。そんなことを悩んでいるより、1日でも早く起業をした方がいいよ。やりながらいろいろ学んでいけばいいよ。」

「そうなんですか。」

「ああその通り、やってみようと思うことは、試してみて、ダメならすぐにやり直すことが大切なんだよ。ねえ、松田さんもそう思いませんか。あなたも小さい頃から、働いてますよね。僕らとは次元は違いますが、自分の力でファンを獲得して、しかもいろいろあっても、今も人気が衰えない、アイドルとしての意見も聞いてみたいですね。」

響輝は自分に水をむけられて、驚いて目を丸くし、しばらく沈黙していましたが、ゆっくりと話し始めました。

「僕の場合は起業を自分がしたのではなく、父が行ってくれたので、まわりの人が何もかもお膳立てしてくれて、僕はただ好きな歌やお芝居をしているだけです。でも、事業することを楽しめると思うのなら、先輩方がおっしゃったように、早く小さく始めることはいいと思いますよ。ただ一人でやる覚悟があるのなら、自分の管理できる範囲で従業員も資金もね。」

「ありがとうございます。私も始めたいと思います。あのあつかましい話しなのですが、今後もみなさんの事業の話聞かせていただけませんか。」

「もちろんいいですよ。僕たちは自分の事業のことを話すことや、他の人の事業の話を聞くことはとても楽しいのですよ。事業の内容は違うが、お互いの良い所を学び合うこともできるのです。」

響輝は先輩と由美子に向かって言った。

「僕も仲間に入れてください。」

「もちろんですよ。」

皆、声を揃えて言った。

投稿者

ほたる

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