5月3日の夕方5時過ぎに、由美子と両親は川崎麗奈と、ホテルの喫茶コーナーで待ち合せて、合流してコーヒーを飲んでいた。川崎麗奈の彼氏は都合で少し遅れるとのことだったので、ここで待つことにした。由美子の両親は川崎麗奈とは初対面のため、コーヒーを飲みながらお互いのことを話していた。
パーティー会場はホテルの最上階のフロアで、午後6時から行われることになっていた。松田響輝は今も以前の芸能事務所とは、正式な契約は交わしていないが、芸能界には絶大な権力を持つ、この芸能事務所は今も松田響輝を所属しているタレントのように、業界に言っていたので、彼に仕事を依頼する時は必ず、この芸能事務所を通していた。
今日の新曲記念パーティーも設定しているのは、その芸能事務所であった。そのため何人かのタレントがお祝いをするため駆け付けていた。もちろん以前松田響輝が失恋した、女性アイドルと交際中の俳優は来ていなかった。最近はその女性アイドルと俳優も破局間近という噂もあった。
5時半頃喫茶コーナーに川崎麗奈の彼氏が入って来た。そして由美子と両親そして川崎麗奈と彼女の彼氏の5人は、松田響輝に挨拶に行くことにした。5人は最上階に行くためエレベーターに乗った。最上階についてエレベータが開いた時、女性の甲高い悲鳴が響き渡った。
「キャー!誰か来て!」
5人は悲鳴のした方に歩いて行った。そこは松田響輝の控室であった。そこには若い女性の絞殺死体が横たわっていた。しかし松田響輝はその場にはいなかった。第一発見者はこのパーティーを設定した、芸能事務所のスタッフであった。松田響輝と最後の打ち合わせに来たのであった。
女性の死体は首に革のベルトが巻きつけられ、その首には何本ものひっかき傷があり、ベルトには女性の指から剥がれたと思われる爪が引っかかっていた。その女性の表情は苦しみに歪み、顔を上に向けて、目を見開き、口も大きくあいて、苦しみ抜いて亡くなったようだった。あまりにも恐ろしい死に顔に、見た人はみんな目を背けた。
「だれか救急車と警察に連絡してください。」
見物に集まった人の一人がそう叫んだ。
「救急車は手遅れです。警察を、警察を呼んでください。松田さん、松田さんはどこに行ったの。」
すぐに警察が来て、そのホテルにいるすべての人が、ホテルから出ることを禁じられた。由美子たちはその現場にいたため、すぐに刑事たちに事情聴取されることになった。5人は松田響輝の新曲発表パーティーに招待されたことを説明し、刑事にはすぐに事情聴取は終わった。
由美子は松田響輝が控室に居なかったことで、とても不安になった。川崎麗奈と彼女の彼氏も同様の不安を感じていたようだったが、あえて誰も口には出さなかった。
刑事たちの動きも松田響輝がどうして控室に居ないのか。ということに集中しているようだった。ホテルの中をくまなく捜索したが、見つからなかったようだった。パーティー会場のスタッフにも松田響輝に連絡を取るように指示したようだった。