5月4日刑事たちは朝から、それぞれの2人組になって聞き込みを始めた。まず美鈴のマネージャーに聞き込みに行った刑事たちは、もともと静岡のドラマ撮影は入っていた。この事件で美鈴がホテルで殺されたと聞くまでは、マネージャーは美鈴は静岡に行っているものだと思っていたと言い、彼女の事務所もそう聞いていたとのことだった。
しかしなぜ美鈴のマネージャーが、静岡の現場に同席していないのかという問いについて、マネージャーは今まではいつも仕事には同席していたが、最近体調が悪く、通院もしていたので、遠出の仕事には美鈴が一人で行くことが多くなっていた。しかも顔見知りのスタッフの中での仕事なので、問題はないと事務所も判断していた。
事務所が事件を知って、撮影現場に確認すると、事件の日の朝美鈴から連絡が入って、急に熱が出たので今日は撮影を休ませて欲しいと言い、静岡のホテルで休養していると、話していたので、撮影は美鈴が登場しない部分を行うように予定を変更していたらしい。もちろん現場の人もまさか都内にいるとは思いもしなかったと言っていた。
美鈴のマネージャーには恋人の役者との、今の仲についても聞いてみた。
「詳しくはわからないのですが、美鈴は彼が社長令嬢と結婚して、逆玉を狙っていると思っていたようですよ。だから最近イライラしていることも多かったと思います。たぶん興信所なども使って、彼の身辺調査をしていたかもしれません。」
「ずいぶん穏やかではない話ですね。しかし先日俳優さんにお聞きした時は、何にもそんな関係ではないと言われていましたが……」
「そんなことはないですよ。興信所の報告を見た美鈴は激怒していましたよ。別れ話まで出ていたかどうかはわかりませんが、彼は社長令嬢と婚約する気は絶対にありました。美鈴はそう言っていました。」
美鈴のマネージャーは眉間にしわを寄せて、俳優に対する嫌悪感を露わにしていた。
「もう一つお聞きしたいのですが、松田響輝さんの新曲記念パーティーの会場で、殺されたことについて、どう思われますか。松田響輝さんが今でも美鈴さんを、恨んでいるのではないですか。松田響輝さんの控室が現場だったので。」
「それは考えられません。確かに以前は大きなトラブルになり、松田さんには本当に申し訳ないことをしたのですが、それもあの俳優にそそのかされて、大金を松田さんから貢がせて、そのすべてをあの俳優に貢いだ。そのことについては松田さんにも、あの騒動の後美鈴さんは謝罪に行って、受け入れてもらっています。それに松田さんは絶対に人を殺すような方ではないですよ。」
美鈴のマネージャーは確信を持ったように、きっぱりと言いました。そして続けて話しました。
「あの、報道で松田さんがホテル近くで、倒れていたとなっていましたが、大丈夫なんですか。」
美鈴のマネージャーは心配そうに刑事たちに聞いてきた。
「命には別条ないですよ。でもまだ意識は戻っていません。」
そう刑事の一人が答えた。
「そうですか。早く良くなって欲しいですね。」
刑事たちは質問を終えて帰っていった。